Saturday 23 August 2008

競歩で泣く

競歩―――。子どもの頃はあのおしりをプリプリ振る独特の歩き方がただユーモラスにしか感じられなくて、ごくまれに放送されるこのマイナー競技の様子を見ては『どうしてこの人達はこんなおかしな種目を選んだんだろう』と不思議で仕方がなかったものだ。日本の山崎選手も練習中小学生に笑われたことがあるらしい。やっぱり。

しかし、ある程度年齢を重ね「20kmなり50kmをひたすら歩く。それもただ歩くのではなく、ルールの範囲内で可能な最速の早さで」ということがいかに過酷か理解できるようになった今は、見ているだけでこちらの股関節が磨り減っていくような感覚に襲われる。大体、普通の人間の歩く速さが時速4kmなのに、トップの選手は20kmを1時間20分、50kmを3時間40分ほどで完走(完歩?)するのだ。もしかしたら私の全力疾走より速いかもしれない。

20kmで銅メダルを獲った豪のジャレド・タレント選手がゴールを目の前にして突然「ゲボー」と戻したり、50kmを歩ききった選手が次々にその場に倒れて 動けないでいる様子を見ていると涙が勝手に溢れてくる。50kmで優勝したイタリアのアレックス・シュバーツァー選手がゴール後よろよろとコース脇で四つんばいになりトラックに顔を埋めて号泣し始めた時は、私もつられて号泣してしまった(人生を楽しむイメージの強いイタリアの人が地味な競技に真剣に取り組む姿が意外過ぎたのもある)。

静かに熱く残酷な中でも何か人の心に訴えかけてくるレース、競歩。マラソンと同じくらい注目されてもいいのに。

No comments:

Post a Comment