Thursday 19 March 2009

It’s all green to me

bok_choy さっぱり分からない物事に接した時、英語では

“It’s all Greek to me.”

という表現がある。直訳すると「それは私にとって全部ギリシャ語だ」という意味で、 英語圏の人にとってギリシャ語はアルファベットからして異なるためちんぷんかんぷんであることに由来するものだとか。

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近年増え続ける中華系移民のおかげで、メルボルン近郊では青ネギ、大根、ほうれん草、チンゲン菜、小松菜、ニラ、にんにくの芽、もやし、白菜、あさつき、苦瓜等の野菜を気軽に手に入れることができる。テレビの料理番組でもアジア系の野菜が食材の一つとして取り上げられているのを見かける機会は多い。

しかし、オージーやアジア以外の地域からの移民の方々にとってはこれらの野菜をどのように調理したら良いのかまだまだ検討もつかないものらしい。先日届いたタウン情報誌に、アジアン野菜ビギナー向けに地元のマーケットがレクチャーを開くという記事が。そのタイトルというのが、先の慣用句にひっかけて

It’s all green to me.

―――正直時には三つ葉、みょうが、ししとう、白ネギ、大葉あたりが恋しくなるが、日本に帰った時の楽しみがなくなってしまうのもそれはそれで何なのでやはり現状のままでいい、と思うことにしている。

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板木利隆

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地震?

昨日の夕方ニュースの時間になったのでチャンネルを切り替えたところ、トップニュースは30分前にメルボルン周辺で起きた地震の話題だった。えっ?地震なんかあったっけ?私の住む地域も揺れたエリアに含まれているのだが、一緒に部屋にいたダーさんも全く気がつかなかったと言う。訝しがる私たちをよそに、ブラウン管の中ではマグニチュード(英語圏ではRichter scale: リクター・スケールと呼ぶらしい)4.7で定義上は「小地震」の範囲に含まれる程度の揺れについて一大事のごとく報道が続く。

30分ほど経った後、そう言われてみると地震が起きたとされる頃、リビングと寝室を繋ぐドアが細かくカタカタと揺れていたのを思い出した。その時は風のせいかとさして気にも留めないでいたのだが、確かに普段見ることのない震え方ではあった。そうか、あれが地震だったのか。日本の震度で例えるなら、きっと「1」にも満たない揺れだったが、ラジオのモーニング・ショーが昨日の地震に関する体験談を募ったところ、「テーブルや部屋の中の物全部が揺れた」とか「ノイズが聞こえた」等のコメントが聴取者から寄せられていた。もしかしたら震度2くらいの地域もあったのかもしれない。

この地域では今月5日にもマグニチュードが同程度の地震が起きたばかり。それは36年ぶりの「大揺れ」だったらしいが、もちろん報告された怪我人はいない。ちなみに、この時もダーさんと私は一緒に部屋にいたのだが全く揺れには気がつかなかった。

地震国家に生まれ育った日本人は幸か不幸か地震への耐性はかなり身に付いているようだが、かつて大地の揺れをほとんど経験したことがないメルボルン住民が先日の大火災に続く自然の異変に不安を覚える気持ちは分からないでもない。

・・・でも、やっぱり騒ぎすぎだと思う。

Earth tremor shakes Melbourne suburbs - ABC News (Australian Broadcasting Corporation).

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Sunday 15 March 2009

メルボルンで銭湯に行く

あれは数年前のこと。オーストラリアで暮らすことに決めたはいいが住む都市までは絞り込めておらず、とりあえずブリスベン、シドニー、メルボルンを巡る旅行を計画。「ロンリープラネット」のページをパラパラと捲っていた時、メルボルンに銭湯があることを知った。「スパ」ではなく「銭湯」。日本の方が経営しているらしい。ふーん、面白そう。

やがてメルボルンでの生活がスタート。到着後しばらく暮らしたシェアハウスでは、バスタブはあったものの一人で浴室を長時間占領するのは気がひけもっぱらシャワーで済ませていた。それでも進学をきっかけに一人暮らしを始めて以来というものそうする事がほとんどで、湯船に浸からない生活にそれほどストレスを感じていなかったのだが、ある日どうにもこうにも疲れがとれない体を持て余し「ああ、お湯に浸かりたい」と心から感じた。

『ああ、そう言えばメルボルンには銭湯があるって話だったっけ』

日本人の感覚では銭湯の入場料として26ドルはちょっとした出費だが、訪ねてみることに。

109番のトラムをPunt Rd.で下車。交通量の多いVictoria Pd.を後に一方通行の狭いCromwell Rd.を北に上る。辺りはオフィス街のようだったが、日曜の午後ということもあって真っ直ぐな通りには見渡す限り人影がなく、看板らしきものも見当たらない。ひとりぼっちの状況におびえながらも「でも、確かにこの通りで間違いないから」と信じて歩き続けていると、背後に車が近づいてくる気配を感じた。しかも、その車はやたら速度を落としている。も、もしかして強盗?今なら襲われても逃げられない自信がある!怖いよ!!

気にせぬ素振りをしつつ身を固くしていると、セダンは私の脇をノロノロと過ぎ去り数メートル先でピタッと止まった。運転席からスキンヘッドの30代くらいの男性が現れ、辺りをキョロキョロ見回しながら目の前の建物に一人で入って行った。慣れない場所によほど緊張していたのか、その建物に日本語で掲げられた「お風呂屋」の文字にその時ようやく気がついた。

男性の後に続いて入り口のドアを開けると、

「いらっしゃいませー」

と普通に日本語で声をかけられた。初めての来店である旨を伝えると、日本人の店員さんは下駄箱から親切に案内してくれ、館内の設備について一通りの説明が終わると半纏とタオルを渡してくれた。2時間の制限があるらしい。

女湯へ向かう。脱衣場に入ると、すでに入浴を済ませドライヤーで髪を乾かしている地元民と思しき女性が一人いるだけだった。入店してから店員さん以外の日本人の姿を見かけない。

ドキドキしながら浴室のドアを開けると、最初に目に飛び込んできたのは・・・・・なんと湯船に浸かる先客の顔の前に浮ぶペーパーバックだった!後頭部しか見えないが地元の方のようだ。かつてお気に入りの入浴剤を入れたぬる目のお湯に浸かりながらの読書が趣味だった私でも、銭湯で同じ事をする発想はなかった。予想外の先制パンチでショックを受けたような、「その手があったか」と先を越されて悔しいような不思議な気持ちを抱きつつ洗い場へ。日本の銭湯と同様にプラスチックの椅子を一つひょいと掴んで腰をかけたまでは良かったが、シャワーを使おうとした時その作りが少し違うことに気がついた。何?これ、どこを触ればいいの?その時洗い場には私一人。いや、他に誰かいたとしても日本人が銭湯の使い方をオージーに聞けるか!という変なプライドが働いて意地でも聞かなかっただろう。しばらくして壁に使い方が図示してあるのに気づいて事なきを得た。

続きいよいよ念願の湯船に。ペーパーバックの女性は相変わらず読書に没頭している。ゆっくり足を入れお湯加減を確かめながら、ジャボン!

・・・・・はーーーーー・・・・・

全身の毛穴から心地よい暖かさが体の内側に流れ込む。これぞ至福の一瞬。何も考えられない。視界の端にペーパーバックを読んでいる人がいなければ、まるで日本にいるのと変わらない。数分おきに上がったり入ったりを繰り返すうちにすっかり体が温まった。ちなみに、お湯は本を読み続けるには少々熱すぎる温度のように感じた。なぜペーパーバックの女性は平気でいられるのか。オージーの人はアジア人よりも皮膚が厚いのだろうか?

心行くまでお風呂に浸かったことで当初の目的は果たした。もう家に帰ってもいいのだが、せっかくお店が半纏を貸してくれたことだし2階がどんな風になっているのかも気になる。ちょっと覗いてみるか、と考えながら半纏を羽織っていると、

"ハンタン is nice."

私の耳にはそう聞こえた。声の主の方を見やると、これから入浴するらしいオージーの中年女性二人連れが優しい笑顔で私を見ている。「ハンタン」って何だろ?意味が分からなかったので、とりあえず日本人得意の曖昧スマイルを返したその数秒後、

『あっ、”ハンタン”って半纏のことか!』

と気が付いたのだが、すっかり話の流れを掴み損ねてしまって今さら返事もしづらい雰囲気。ああ、"Thank you"とか何とか言えば良かったのに失礼なことをしちゃったな。自己嫌悪しつつ2階へ。

階段を上ると、そこはちょっと居酒屋のお座敷を思い起こさせる雰囲気の造りになっていた。各テーブルの下には畳のマットが敷いてある。久しぶりの畳を前にすっかりテンションの上がった私。他に誰もいないのをいいことに横になってストレッチを始めた。ああ、気持ちいい。やっぱり畳はいいよにゃー。いつまでも畳の感触を味わい続けたい気分ではあったが、新たに男性客が一人上がってきたことで束の間の里帰り気分は終了。

私の他に見かけた日本人のお客さんがついに女性一人だけだったのは正直意外だった。そういえば以前オージーのご婦人と鳥羽の温泉でご一緒したことがあったが、最初は人前で全裸になることに少々抵抗する素振りを見せていたけれど、湯船から朝日の昇る太平洋を眺めて満更でもなさそうな様子だったな。

銭湯 (NHK美の壺)
NHK「美の壺」制作班

銭湯 (NHK美の壺)
懐石料理 (NHK美の壺) 水石 (NHK美の壺) 花火 (NHK美の壺) かるた (NHK美の壺) 文豪の装丁 (NHK美の壺)
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Thursday 5 March 2009

野次馬オークション

以前郊外の一軒家に住んでいた頃の話。ある週末の午後、部屋にいると近所から男性の大きな声が聞こえてきた。どこかの家のパーティーでおっさんがビールで出来あがっているのだろう、とさして気にも止めないでいたが、やがて聞こえてくる声に独特のリズムがあることに気づいた。耳を澄ますと何か数字を叫んでいるようだ。

"Eight hundred seventy thousand!"

英語で言われた数字は、一旦頭の中で思い浮かべないとピンとこない。えーっと・・・870,000・・・?

"Eight hundred seventy-five thousand!"

えーっと・・・875,000・・・?あっ、もしかしてこれが噂に聞くオークション?近所の家がオークションにかけられている真っ最中だったのだ。最終的にその家は$889,000で落札された。

日本ではあまり一般的ではないが、オーストラリアの住宅はオークションによって買主が決められることが多いらしい。毎週ポストに入るずっしり重い地域情報誌のページのうち半分以上はオークションの物件広告が占めている。

こちらの家は広い。テニスコートやプールが付いている物件もザラで、広告を見ているだけで何やらワクワクする。そして部屋の内装写真が皆インテリア雑誌のように美しい。純粋な私はオーストラリアの人は皆インテリアのセンスに優れているのだろうとすっかり信じ込んでいたのだが、ある時地元の人が

「売りに出す物件の写真は、家具等をレンタルして撮影するのだ」

と教えてくれたことで誤解が解けた。あー、なるほど。そりゃ、そうですよね。

その後シティ近辺に越して数ヶ月経ったある週末の午後。どこからか男性が大きな声で喋り続ける声が聞こえてきた。今回はすぐにオークションだと気づき、サッと見学に飛び出した。

[caption id="attachment_451" align="alignright" width="300" caption="ほとんどがただの野次馬"]ほとんどがただの野次馬[/caption]

向かいのアパートメントの一室がオークションにかけられているようだ。辺りには建物の前と道路を挟んだこちら側に分かれて4、50名の人が集まっている。オークショニアーが独特の口調で物件について一通り説明を終えると入札開始を宣言。

「それでは39万ドルから!」

すぐに一組が開始価格で入札するが、なかなか次の声がかからない。えっ?もしかしてこのまま終了するとか?他人事ながらドキドキしたが、しばらくして別の組から39万5千ドルの声がかかった。

オークションの様子が知りたい方は下の動画が参考になると思う。どこもこんな感じ。







遠巻きにその様子を眺めていると上等そうなスーツで決めた不動産屋のお兄さんが近寄って来て、近々オークションが行われる予定の物件一覧が載った上等な冊子をくれた。ポテンシャルカスタマーとして見てもらえたのだろうか。何かうれしい。でも、そんな予定は全くない。

大勢の人が集まっているにもかかわらず入札に参加しているのは2組のみで、あまり値が上がらない。途中、片方の入札者が冗談とも本気ともつかない様子で

「40万・・・5千・・・500ドル」

と声を上げたが受け入れられなかった。どうやら最低入札単位は$5,000らしい。オークションは5分もかからないうちに(多分)$415,000で終了した。数ヶ月前の広告で見たこの地域の似たような物件の価格を考えるとかなり値が下がっている。不況の影響はここにも現れているようだ。

いつか私もオークションに参加する日は来るのだろうか?日本円にして数千万円の買い物を決断するなんて固定価格ですら難しいのに、どんどん価格が上がっていく中冷静を保ちながら数分のうちに判断するのはかなりの精神力が必要だろうな、お金に余裕があればともかく。

オークションの人間行動学 最新理論からネットオークション必勝法まで
川越 敏司 佐々木 俊一郎 小川 一仁

オークションの人間行動学 最新理論からネットオークション必勝法まで
オークション理論の基礎―ゲーム理論と情報科学の先端領域 選挙のパラドクス―なぜあの人が選ばれるのか? メカニズムデザイン―資源配分制度の設計とインセンティブ 禁断の市場 フラクタルでみるリスクとリターン 神経経済学入門―不確実な状況で脳はどう意思決定するのかby G-Tools