ネットで部屋探しをしていると、時おり
"Open for Inspection"
の文字に続き日時が記されている物件があるのに気づく。
こちらではネット等で気になった物件を見つけたら、その物件を取り扱っている不動産屋で鍵を借り自分で勝手に見に行くのだが、"Open for Inspection"の日は指定の日時にその家が開放され(15分間位のことが多い)、希望者は予約なしで自由に物件の内部を見学できるらしい。
「これはいい」ということで、気になっていたアパートの中から"Open for Inspection"の日が設定されているものを選び、ダーさんと訪ねることにした。
駅から徒歩圏内にしては閑静な住宅地(と言っても、私の知る限りメルボルンは大体どこもこんな感じなのだが)に建つレンガ造りの2階建のアパートに到着したのは、開始予定時刻の5分前。辺りに立ち並ぶ大きな街路樹が、夕方とは言えまだまだ強烈な紫外線にひっそりと耐えている。
入口の前に所在なさげに立つ若い女性が一人。先客のようだ。ほどなくして不動産屋の女性が到着。すごい勢いで階段を駆け上がりチャッチャと合鍵でドアを開けると、
"どうぞ入って!"
と声をかけられ、部屋の中に通された。
ネットから得た情報によると、ここは寝室1部屋の他にリビングがあって、それとはまた別にキッチンがあるらしい。しかし、オーストラリアの不動産物件情報には間取りが記載されていないのが通常で、稀にあったとしても面積までは明示されていない。このアパートについても広さは知り得なかったのだが、私たちには
『オーストラリアなんだからどんな部屋も充分広いに決まってる』
という根拠のない思い込みがあった。そして、どうせ寝室は一つしか使わないのだから1ベッドルームで充分じゃないかと考えていたのだ。ところが、部屋に入ってすぐの印象は
『・・・・・狭ッ!』
間取りは6、7畳ほどのリビングと同じ広さのベッドルーム。そして、小さなキッチンと洗濯機置き場にユニットバス。洗濯機置き場も狭くドラム式のタイプしか置けない。どう見ても一人暮らし向けの物件だ。いや、日本から来たばかりの時ならこれでもOKだったのかもしれないが、現在2ベッドルームのユニットに暮らしているせいか、もうこの狭さには耐えられそうもない。
戸惑っている私たちに向かって不動産屋のお姉さんが「それで、どっちが住む予定?」と尋ねてきた。正直に「・・・・・二人とも」と答えると、明らかに一瞬ギョッとした様子。
見学後、物件が気に入った場合はその場でアプリケーションフォームを受け取り、後日それを不動産屋に提出、家主に審査してもらう段取りになるのだが、私たちは遠慮した。もう一人の女性ももらわずに帰ったようだ。
そして、実際1軒見て出した結論。
「私たちには2ベッドルームは必要だ。アパートは狭くて騒音が気になる。やっぱりユニットがいい!」
―――今思い返せば、この時点においてもやっぱり何も分かっちゃいなかったのだけれど。
注: 「アパート」と「ユニット」について
アパート・・・・・日本で言うところの「アパート」とほぼ同じ。
ユニット・・・・・一つの区画に数世帯が暮らす点はアパートと同様で、それぞれの世帯の建物が独立または1つの建物が数世帯居住できるよう分割されているもの。いろいろなタイプのユニットがあるらしいけれど、私の見た範囲では平屋の1、2ベッドルームで、一つの建物に1世帯または2世帯で住むタイプが圧倒的多数。
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