Monday 5 April 2010

WEBでくらもちふさこが読めて感激!

日本のネット書店を通じて購入した井上雄彦の「バガボンド」と「リアル」をきっかけに、先日久々にマンガを読む楽しみを思い出すと、今度はかつて愛読していたくらもちふさこの作品を読み返したくてたまらない欲求に襲われた。


いつもポケットにショパン」「いろはにこんぺいと 」「A‐girl 」「東京のカサノバ」「アンコールが3回」「Kiss + πr² 」「千花ちゃんちはふつう」「タイムテーブル」「海の天辺 」「チープスリル」「おばけたんご」「天然コケッコー 」etc…結構な数のコレクションは全て日本の実家に置いたまま。英字アレルギーの還暦を過ぎた親やたまの休みに実家に帰る弟に「マンガを段ボールに詰めてオーストラリアに送って」と頼むのはさすがに気が引ける。メルボルンにもマンガ喫茶はなくはないけれど・・・。

悶々としながらくらもち先生が現在作品を発表している集英社「コーラス」のサイトをチェックしたところ、同誌掲載作品のいくつかをWEBでも公開していることを知った。そして、タイムリーなことに、その中にはくらもち作品が含まれていたのだった!大御所くらもちふさこのマンガをWEBで公開するとは、集英社はなんと太っ腹な会社なのか。オーストラリアにいながらにしてくらもちふさこの最新作が読めるなんて、ビバ、21世紀!!ビバ、インターネット!!

はやる気持ちを抑えつつ、早速所定のソフトをインストール。3月号に掲載された「花に染む」第1回は弓道部に所属する中学生が主人公で、現在「コーラス」で不定期連載中の「駅から5分」と同じ花染町が舞台。「駅から5分」は残念ながら未読だが、登場人物もかぶっていていわゆるスピンオフものらしい。初回の最後は、登場人物の実家でもある神社で火事が発生したところで終わった。今後の展開が気になる。

「花に染む」もそうであるように、最近のくらもち作品は素朴な普通の少年少女が中心なのだが、私が「別冊マーガレット」で読み始めた頃のくらもち作品では主要キャラクターの中に女優、モデル、音楽家、作家等、ちょっと遊び慣れていたり頭が切れたり才能がきらめいていたりと華やかな世界で活躍する人物がいて、中高生だった私はまだ見ぬ「東京」という大都会で繰り広げられる数々のエピソードに心をときめかせたものだ。

くらもち作品のキャラクターは女の子がそれぞれかわいらしいのはもちろんの事、男の人が「そんなかっこいい人などこの世にいない!」と泣きたくなるほど、とにかくとびきりにかっこいい。中でも好みなのは「東京のカサノバ」の暁(あきら)と「アンコールが3回」の不破くんだ。周囲の人間への優しさの配分が絶妙で、彼らのような女の人が放っておかないタイプと現実に付き合ったら、他の素敵な女の人からいつちょっかいをかけられるか心配で気の休まる暇がないことだろう。

また、「Kiss + πr²」の青沼くんや「天然コケッコー」のシゲちゃん等、他の女性向けマンガではあまりお目にかからない、平たく言えば決して女性受けしなさそうなキャラクターに至るまで一貫してくらもち先生の優しい目線が感じられるのもいい。

ほのかな好意、何気ない言葉遣いや一見冷たい素振りの裏に隠された愛情、好きな人の前で素直に振舞えず自己嫌悪、後になって気づく相手の思いやり、いつもと変わらぬ日常の中に潜む小さな疑惑、立場上露にできない嫉妬、勘違いからの落ち込み、相手の本心が掴めない焦燥、うっかり言い過ぎてしまった後悔、憧れのあの人に近づくチャンスが期待外れに終わってがっかり、ちょっとした意地悪心、誰にも打ち明けられないでいる秘密――繊細な心の動きや些細な出来事の一つ一つが絶妙な色遣いの天然石のネックレスのように繋がれたストーリーは、日常の中でふと思い返す度キラキラ輝いては、時空の彼方遠くへ過ぎ去ったはずの10代の自分を今に蘇らせる。

次に日本に帰った時は、実家の本棚に眠るくらもちコレクションとここ数年の未読作品を必ずメルボルンに連れて来よう。決めた。

Chorus Lovers(「花に染む」他「コーラス」のWEBマンガはこちらから)


駅から5分 3 (クイーンズコミックス)

駅から5分 3 (クイーンズコミックス)
駅から5分 2 (クイーンズコミックス) 駅から5分 1 (クイーンズコミックス) くらもちふさこWORKS―Illustration&Technique 月のパルス (2) (クイーンズコミックス―コーラス) 月のパルス (1) (クイーンズコミックス―コーラス)
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