Saturday 10 April 2010

電力会社セールスとの終わりなき闘いの日々

我が家がメルボルンで暮らし始めてからこれまでの間には、自動車保険、ケーブルテレビ、無農薬野菜等様々なセールスマンの訪問を受けてきたのだが、飛び抜けて多いのは電力会社だ。日本では地域ごとに電力会社が決まっているが、オーストラリアでは世帯ごとに好きな会社を選べるため、各社の電話、訪問セールスによる顧客の奪い合いが慢性化している。






「私、○○エナジーの者です。現在お宅は電気はどちらの会社とご契約を?」
「エナジー△△△?うちに変えるともっとお安くなりますよ。請求書を見せてもらえます?」
「ほら、この時間帯ならこの値段になるんですよ。どう?安いでしょ?」
「契約変更の手続きは僕がするから。あなたは何もしなくていいから」

が彼らの常套句。

私は日本にいる時から、相手がセールスマンと分かるやすぐさま話を切り上げることにしていた。一旦聞き始めると、話を終わらせるのに大変な労力を要するからだ。ましてや、それを英語でやるとなっては……。2週間に一度は入れ代わり立ち代わり訪れる電力会社のセールスをいちいち断るのに疲れた私は、やがて居留守を使うことを覚え、見かねたダーさんが在宅時は代わりに応対してくれるようになった。それは本当に有難いのだが……困ったことにうちのダーさんは、英語での会話はほぼ問題ないものの、”No”が言えないという致命的な弱点があるのだった。うちはこの2年間で二度電力会社を変えたが、それはダーさんが応対した結果だ。その度に新旧2社で請求期間がかぶっていたり、契約キャンセル料として数十ドル請求されたりで、正直うんざりしていた。

ある日の夕方、誰かが玄関のドアをノックする音が。ダーさんが立ち上がりドアを開けた。後ろから耳を澄ますとまたまた電力会社のセールスマンだった。

ダーさんは毎度おなじみの営業トークに、いちいち礼儀正しく耳を傾けている。聞くな!聞くから”No”と言えなくなるのだ。しかも1ヶ月前に変えたばかりで、変えたのはあんただ。

今回だけは何としても阻止せねば。話の途中に私も”Hi”と割って入った。セールスマンのお兄さんも”Hi”と笑顔で応えた。お兄さんのポロシャツの胸元に、我が家が1ヶ月前まで契約していた電力会社のロゴが見えた。

お兄さんが言うことには、我が家が先日新しく契約した会社は

「メーターを多めに読んで、顧客からの苦情が増えているんだよ」

ええ、そうなの?嘘かホントか知らないが。

「それに、うちは100% Australian ownedの会社だから安心だよ」

とインド訛りのキツい英語で続ける。確かに契約していた間、特に問題はなかったけど……。

一通りのセールストークが終わると、例によって過去の請求書の提示を要求してきた。ダーさんが渡したレターを一瞥したお兄さんは

「これ、うちの会社のだけど」

と怪訝な顔に。「契約先を変えたばかりで、新しい会社からはまだ請求が来てない」と説明すると、

「何で変えたの?」

とキツい口調に変わった。……はあ、すみません。

「元に戻すよ」

ああ……もういいか。いいわ、どっちでも。ダーさんと一緒に話を聞いているうちに、私の戦闘意欲もすっかり削がれた。この状態から拒絶に持っていけるほどの英語力は、私にはない。

契約変更手続きに身分証明書が必要になり、ダーさんが免許証を取りに席を外すと、お兄さんが私に「何でうちから他の会社に乗り換えたの」と聞いてきた。

「彼が……ノーと言えない人で」
「何で?」

何で?何で?てうるさいなー、もう。

「うーん、彼は……too niceで……」
「Yeah! 彼はtoo niceだよ」

大きく頷いている。セールスマンに同情されるとは。

それにしても、また大した理由もなしに会社を変えてしまった。そのうち契約をコロコロ変える問題カスタマーとしてブラックリストに載れば、あちらからセールスを遠慮してくれるようにならないかしら?・・・そんなわけないか。


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