Thursday 5 March 2009

野次馬オークション

以前郊外の一軒家に住んでいた頃の話。ある週末の午後、部屋にいると近所から男性の大きな声が聞こえてきた。どこかの家のパーティーでおっさんがビールで出来あがっているのだろう、とさして気にも止めないでいたが、やがて聞こえてくる声に独特のリズムがあることに気づいた。耳を澄ますと何か数字を叫んでいるようだ。

"Eight hundred seventy thousand!"

英語で言われた数字は、一旦頭の中で思い浮かべないとピンとこない。えーっと・・・870,000・・・?

"Eight hundred seventy-five thousand!"

えーっと・・・875,000・・・?あっ、もしかしてこれが噂に聞くオークション?近所の家がオークションにかけられている真っ最中だったのだ。最終的にその家は$889,000で落札された。

日本ではあまり一般的ではないが、オーストラリアの住宅はオークションによって買主が決められることが多いらしい。毎週ポストに入るずっしり重い地域情報誌のページのうち半分以上はオークションの物件広告が占めている。

こちらの家は広い。テニスコートやプールが付いている物件もザラで、広告を見ているだけで何やらワクワクする。そして部屋の内装写真が皆インテリア雑誌のように美しい。純粋な私はオーストラリアの人は皆インテリアのセンスに優れているのだろうとすっかり信じ込んでいたのだが、ある時地元の人が

「売りに出す物件の写真は、家具等をレンタルして撮影するのだ」

と教えてくれたことで誤解が解けた。あー、なるほど。そりゃ、そうですよね。

その後シティ近辺に越して数ヶ月経ったある週末の午後。どこからか男性が大きな声で喋り続ける声が聞こえてきた。今回はすぐにオークションだと気づき、サッと見学に飛び出した。

[caption id="attachment_451" align="alignright" width="300" caption="ほとんどがただの野次馬"]ほとんどがただの野次馬[/caption]

向かいのアパートメントの一室がオークションにかけられているようだ。辺りには建物の前と道路を挟んだこちら側に分かれて4、50名の人が集まっている。オークショニアーが独特の口調で物件について一通り説明を終えると入札開始を宣言。

「それでは39万ドルから!」

すぐに一組が開始価格で入札するが、なかなか次の声がかからない。えっ?もしかしてこのまま終了するとか?他人事ながらドキドキしたが、しばらくして別の組から39万5千ドルの声がかかった。

オークションの様子が知りたい方は下の動画が参考になると思う。どこもこんな感じ。







遠巻きにその様子を眺めていると上等そうなスーツで決めた不動産屋のお兄さんが近寄って来て、近々オークションが行われる予定の物件一覧が載った上等な冊子をくれた。ポテンシャルカスタマーとして見てもらえたのだろうか。何かうれしい。でも、そんな予定は全くない。

大勢の人が集まっているにもかかわらず入札に参加しているのは2組のみで、あまり値が上がらない。途中、片方の入札者が冗談とも本気ともつかない様子で

「40万・・・5千・・・500ドル」

と声を上げたが受け入れられなかった。どうやら最低入札単位は$5,000らしい。オークションは5分もかからないうちに(多分)$415,000で終了した。数ヶ月前の広告で見たこの地域の似たような物件の価格を考えるとかなり値が下がっている。不況の影響はここにも現れているようだ。

いつか私もオークションに参加する日は来るのだろうか?日本円にして数千万円の買い物を決断するなんて固定価格ですら難しいのに、どんどん価格が上がっていく中冷静を保ちながら数分のうちに判断するのはかなりの精神力が必要だろうな、お金に余裕があればともかく。

オークションの人間行動学 最新理論からネットオークション必勝法まで
川越 敏司 佐々木 俊一郎 小川 一仁

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